トラフィックエクスチェジの失敗

タイマー

トラフィックエクスチェンジと言えばタイマーです。

「自分が一定時間他の人のページを見る。その代わりに他の人も自分のページを一定時間見てくれる」

それがトラフィックエクスチェンジというものでした。

しかし、思えばこれが間違いの第一歩でした。
なぜなら「タイマー」でいくら待たされても、興味のないものが興味のあるように変化するわけではないからです。 待たされれば待たされるほど苦痛なだけです。

「待ち時間が長いほどポイントが多くもらえる=広告としての効果が高い」という素朴な思い込みがありました。
少し考えてみればこれが大間違いであることは明らかです。
待ち時間が長ければ長いほど「その間に別のことをしていよう」ということになります。画面を見ない。
タイマーは逆効果だったのでした。

オートサーフ

トラフィックエクスチェンジが出始めの頃は「手動」が当然でした。 むしろマウスの自動操作ツールなどを使うことは規約違反として厳しく取り締まられたものです。 だって「お互いに見ましょう」なのだから、本人が自分で画面を操作しないと成立しません。 それを自動化するなど、ありえない。

そのはずなのに、いつの頃からか「オートサーフ」なるものが登場しました。運営公認のチートです。

ただでさえ誰もが自分のポイントを増やすことにしか興味がないのに、 オートになってしまったら誰も他のユーザーのページを見るわけがない。 誰も見ていない最小化されたウィンドウの中で虚しくアクセスカウンターが回るだけです。

そしていつしか 「トラフィックエクチェンジってのはカウンターだけ回して嬉しがるための無意味なツール」 というイメージが世間に定着してしまいました。 (そして「手動式」の古参サイトを巻き込んで一斉に廃れていった……)

ポイント販売(そして換金、ダウン、ネズミ講化)

私の知る限り、ほとんど全てのトラフィックエクスチェンジがポイントを販売していました。 (してなかったのはごく初期のもの以外では「クイズでアクセスアップ」ぐらいじゃなかったですか?)

ポイント販売は「商品」としては「わかりやすい」です。 しかしトラフィックエクスチェンジのシステムとは根本的に矛盾しています。 「お互いにお互いのページを見る」というのが大原則であるはず。 しかし、ポイントをお金で買うということは、買った人は他の人のページを見ないということです。 見る気がないから買う。運営は「お金を払えば見なくてもいいですよ」と言って売る。

つまり、運営はそのときだけは利益を得られるかもしれないけれど、 ポイントが売れれば売れるほど、トラフィックエクスチェンジとしてのシステムが崩壊する=PRのツールとしての効果が減る、ということです。

商品としては「わかりやすい」。しかし、ポイント販売は禁じ手です。 それなのに、ほとんどのサイトがそれをやってしまっていた。

システムに矛盾するだけではありません。 ポイントというものに「カネのニオイ」がつくのもよくありません。

やがて「換金」「紹介制度」「ダウン」「何もしなくてもポイントがたまる!」 というように、アクセスアップを自称するネズミ講のようなサイトが大量に沸いては潰れていったのでした。 (そのたびに「トラフィックエクスチェンジ」のイメージを悪化させつつ……)

甘いことを言い過ぎた

トラフィックエクスチェンジを利用するときには冷静さが必要です。
理由は2つあります。

まず、人工的かつ一時的とは言え、大量のアクセスが得られます。 個人的にブログやサイト運営しているだけでは絶対に手が届かないような大量のアクセスが簡単に得られます。
そこで興奮してはいけない。
それらは「いわゆる本物のアクセス」ではありません。 ポイントを目当てに一時的にアクセスしているだけのものです。
しかしそれでいい。
一時的とは言え、ページが表示された。そこからいかにして「本物のアクセス」につなげていくか?  そういう取り組みを実行するチャンスです。
それはトラフィックエクスチェンジに限ったことではありません。 バナー広告であれ何であれ、載せたそのときにアクセス数だけ稼いでそれで終わりではない。 ユーザーがサイトに訪問してくれたというチャンスをいかにして活かしていくか?  そういうチャンスを低コストで提供することこそ、まさに、トラフィックエクスチェンジの本来の目的であり用途であった。そのはずです。 アクセス数に興奮せず、惑わされず、冷静かつ現実的な前向きさが必要だった。

それからトラフィックエクスチェンジは「お互いに見る/見せる」というのが大原則です。 したがって、自分が見なくても済むなら、他の人だって見なくても済む。 「タイマー」であれ「オート」であれ「ポイント購入」であれ、 自分で実際に他のユーザーのページを見なくても済むようなフィーチャーが存在すれば、同じことは他のユーザーにも当てはまる。誰もあなたのページを見ない。 それを理解する冷静さが必要だった。

しかしトラフィックエクスチェンジは甘いことを言い過ぎました。

「簡単に」「大量のアクセスが」「何もしなくても」

こうした甘く派手な文言で飾り立て、ユーザーから冷静さを奪いました。
結局、理性的なユーザーは遠ざかり、冷静さを欠いたユーザーばかりが残りました。

冷静さを欠いたユーザーは自分は努力したくないから「オート」のようなものを求めます。
冷静さを欠いているから「オート」で得られる大量のアクセスの無意味さにも気付きません。

こうなるとすでに「お互いに見る/見せる」という大原則はうやむやになっており、 「アクセスアップ」サービスとしての効果など望むべくもありません。

中身の無い「ポイント」という数字だけが虚しく増えていく。
すると、あとはもう「換金」「紹介」「ダウン」「何もしなくても収入が!」というお馴染みの文言とともに 「アクセスアップ」を自称するネズミ講へと一直線です。

総括

堕落の直接的なキッカケは「オートサーフ」の導入です。 この時点で「お互いに見る/見せる」という原則は崩壊しています。 あとはもう、冷静さを欠いたユーザーを集めてネズミ講化する道が待っているばかりです。

ではなぜ「オート」などというものが広まってしまったのか?  それは「タイマー」だったからです。 ポイントが目当てとは言え、興味のない他人のページを見るのは苦痛です。 「次のページへ」のボタンをクリックするという単純な作業を数十秒おきに繰り返すためだけに、パソコンの前から離れられない。 なんとかして自動化できないか、とユーザーが考えるのは人間として当然の心理です。

ここで必要だったのは次の2点です。

ユーザー側の理性

本当に自動化してしまったら「お互いに」という原則が崩れてアクセスアップ効果は消える、ということに気付く理性が必要でした。

運営側の創意工夫

「タイマー」というシステムの欠点に向き合い、別の方式を考え出す誠意と創意工夫が必要でした。
そうした努力をせず、「タイマーで一定時間待たせておけばそれでいい」という安直さがあった。
「表示時間が長ければ長いほど広告としての効果が高い」という固定観念があった。
「ポイントが欲しければタイマーを耐え忍ぶ我慢と引き換えなのが当然」という思考停止があった。

上記の2点を欠き、ついに運営側が「オート」を導入してしまいました。 「オート」が「エクスチェンジ」として間違っているのは明らかですが、ユーザーの側にも「楽をしたい」という願望が渦巻いていた。 そこへ運営が甘く派手な言葉でユーザーから冷静さを奪い、 「アクセスアップ」としての本来の効果を打ち捨ててネズミ講化への道を突っ走ってしまった。

以上のように経緯を見ていくと、堕落の直接のキッカケは「オート」の導入ですが、 そもそもの問題の根は「タイマー」という方式にあった、とも言えることに気付きます。 そこで創意工夫をせず、安直な方向へと流れてしまった。それが「失敗」の実相です。

今後の課題と展望

こうしてトラフィックエクスチェンジは失敗したわけですが、 しかし本来、トラフィックエクスチェンジが解決すべきだった課題は解決されないまま残されています。

「新たに作ったサイトの存在をどうすれば人々に知ってもらえるか?」

検索エンジンやSNSが発達した今日のネットでも、そのハードルの高さはあまり変わっていません。 むしろ手法が複雑になり、コストが高くなるとともに、人々を混乱させています。 さらに言えばプロモーション活動が「スパム」になってしまうリスクも上昇しています。 旧来からメールのスパムというものはありました。 メールに加え、近年は検索エンジンもSNSも社会のインフラとして定着してきており、 その中に広告の手法を持ち込むことが社会に混乱をもたらすリスクは旧来以上に高まっています。 一見して広告のようには見えない広告が増えています。ネット全体の情報源としての信頼性が犠牲になる。 社会に定着したネット空間の中に広告の手法を持ち込むというのはそういうことです。 ネットが「しょせんアングラ」だった時代とは違うのです。

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